アヒルと琥珀

なんとなーくでいきてるひとがたまに書いてます。

先生、私の隣に座っていただけませんか?

俊夫、それはあなたが蒔いた種である。

久しぶりに映画を見た。1年ぶりだ。
SNSか何かで予告編を見た時、これは絶対に見たいと思って公開を心待ちにしていた。体調を崩して1回チケットをふいにしたのだけど、それでも見たくてもう1回チケットを買って見に行った。

佐和子(黒木華)と俊夫(柄本佑)は結婚5年目の漫画家夫婦である。
今は佐和子が主に書き、俊夫は佐和子のアシスタントとして漫画を作っている。
漫画の最終話の原稿が終わり、担当編集者の千佳(奈緒)に原稿を渡し、俊夫が千佳を駅まで送りに行こうと部屋を出た時事態が動き始める。佐和子の母(風吹じゅん)が事故に遭い、怪我をしたという連絡が来る。そして、そのことを伝えに行った佐和子は俊夫と千佳の不倫現場を目撃してしまう。
佐和子の実家は車がないと不便な場所にあり、佐和子は免許を持っておらず、免許を持っている俊夫も共に佐和子の実家に行くことになる。
佐和子が免許を取るために教習所に通い出し、そこで教官の新谷先生(金子大地)と出会う。
ある時新作のネームを佐和子に隠れこっそり見た俊夫は焦り出す。不倫漫画とは聞いていたが、自分たちそっくりのキャラクターがネームの中にいてストーリーが進んでいく。
自分たちの不倫はバレているらしい、しかも佐和子は新谷先生と不倫しているのではないか…これは事実なのか妄想なのか…と物語は続いていく。

最初の30分ほどは退屈で寝てしまいそうになったのだけど、中盤から最後までは引き込まれてしまった。

まず佐和子のミステリアスさである。表面的な感情はあるのだが本当は何を考えているのかが読めないのだ。ただ服装や揺れるピアスが新谷先生の前だと女になる。どんどん妖艶に美しくなっていく。
でも本当のことは読めない。
見ている人もこれは事実なのか妄想なのか分からなくなっていく。わたし自身も漫画パートなのか現実パートなのか一瞬分からなくなっていった。

次に俊夫の憎めなさである。そもそも俊夫が千佳と不倫しなければこんなことにはならなかったわけである。冒頭に書いたようにあなたの蒔いた種だと言ってしまえばそれまでなのだが、慌てふためいてて憎めないのだ。
佐和子のことは好きだけれども、ちょっとした火遊びのつもりの不倫だった。ただ佐和子にバレて、アタフタ慌てふためく。慌てふためき方がコミカルでわかりやすく、シュールなのだ。誤魔化すつもりが墓穴を掘るパターンもあり、不器用でおバカな男なのだ。

千佳は不倫を楽しみつつも編集者としても楽しんでいる。新谷先生はこんな教官さんいたら惚れちゃうなぁ…いてほしかったなぁ…と思ってしまった。
佐和子の母もとてもよかった。彼女がいることで深みが出ていた。

終盤の「先生、隣に座っていただけませんか?」の意味で痺れて、最後はスッと終わってわたしはニヒッっと笑ってしまった。

また映画を見て文を書こうかな。